Healing 3
『みほに癒してほしい』
この文言のメールをずっと待っていました。
Healingの彼とはもう半年近く会っていません。
いちばん間隔が空いても、3か月くらいだった。
どうしたの?何かあった?
彼の前の彼女が自死したのは、、、そういえば数年前の
今頃だった。
彼は、、、自責の念に駆られているんじゃないかって。
毎日、毎日、彼を思っては心配してた。
そんな彼からようやくメールが届きました。
いつものように彼の定宿へ向かいました。
エントランスを抜けると、そっとマネージャーが近付いてきて
彼がいつもの部屋にチェックインしたことを教えてくれました。
「彼、元気そうでしたか?」と、尋ねました。
「みほさんを待ってます」と、彼は会釈してくれました。
彼と向かい合っての夕飯。
「忙しかったんですか?いろんな意味で心配していました」と、わたし。
「ごめんね、いろいろあった。話すよ」と、彼。
奥さまの話、自死してしまった彼女の話。
わたしは、ひたすら聞き役に徹するのです。
「みほは元気だった?仕事ばっかりしてたんじゃない?」と、彼。
「なんでわかるのー?」と、わたし。
茶化してみたけど。
先月からずっと続いている多忙な日々を彼は察したのかな。
窓から見える月がとても美しい。
こんなに都会の灯りが輝いているのに、それとは別格。
ひときわ美しいって思いました。
「満月に近いね」
「みほは満月は好き?」
「どっちかというとクレセントムーンの方がいい」
何故かわからないけど。
泣きそうになった。
彼はそっとわたしの肩を抱きました。
「今日はわたしが癒してもらってる」
「ううん、それは僕だよ」
部屋の窓から見える観覧車。
その後ろで輝いている美しい月。
彼とふたりで見つめていました。
お互いの肌に触れることなんてない。
キスも、ハグもない。
それでも、十分に心が満たされていく。
「もう、わたしの癒しは要らない?」と、わたし。
「どうしてそう思う?」と、彼。
「ううん、聞いてみただけ」と、わたし。
「もっと必要としていいなら癒してもらえる?」と、彼。
彼の表情がいつもとは少し違ったから聞いてみた。
彼の日常、彼のすべてを知ることなど無理なこと。
わたしが関わることができるところだけでいい。
きっと、またここで彼と会う時間が来る。
たぶん、きっと。